工業用硬質クロムめっきの歴史は工業化されてからまだ80年余。しかし、その利用範囲は驚くほど多岐にわたっています。これは、その優れた耐摩耗性、耐熱性、耐食性などの性能によるもので、年々使用条件が過酷化する機械部品などになくてはならない処理法としてあげられています。
性能と特徴については、まず、硬度が大きいことから機械部品や工具類に施すことによって、耐摩耗性が著しく向上します。成型金型類は、離型性がよくなり、製品も美しくなるほか、型の寿命も大幅に延びます。また、耐食性においては、化学・食品工業の分野でも活躍しており、さらには自由な厚さでしかも部分めっきができるため、部品の補修や摩耗した部品の再生ができるなど、工業界に寄与する所は数えきれません。
クロムめっきは大きく装飾用と工業用に分けられますが、装飾用はその光沢を利用することが多いのに対して、工業用はその物質的な特徴に注目した利用法が多いです。また、めっき厚が厚い(JISでは2μm以上と規程)ことが装飾用と異なる点です。以下にクロムめっきの特徴を挙げます。
要求される特性 | 求められる加工対象 | 備考 |
高硬度性 | シリンダ・ロール・ 各種金型・ゲージ |
Hvが800〜1,300と非常に高い。 |
潤滑性 | シリンダ・ピストンリング・ 軸受け・シャフト |
潤滑油を使用する環境下で特に弊社のポーラスめっきは 保油性の面でも好ましい。 |
肉盛り製 | ロール・軸受け・シリンダ・ クランクシャフト・金型 |
金型などはめっきによって再生させる方が経済的であり 寿命面でもメリットが大きい。 |
離型性 (非粘着性) |
各種金型 | 金型に要求される特性。低摩擦係数とすべり性に密接な影響。 |
低摩擦係数 | 製紙ロール・糸送りロール・ガイド | 耐摩耗性・潤滑性に影響。 |
耐熱性 | エンジン部品 | 400℃以下の高温酸化雰囲気中で使用可能。 |
多孔性 | 内燃機関 (ピストンリング・シリンダ) |
微小孔を有し保油性ともいう。 |
耐薬品性 | 各種塔槽類・熱交換器・バルブ ・フランジ・ポンプ |
化学薬品に対し耐食性を有する特性がある。 |